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在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

東宝映画「若大将」シリーズの10年戦争(その1)~身分違いの恋だから。

21.映画

先週からBSジャパンで「土曜の若大将」が始まった。

 

必見!BSジャパン「土曜の若大将」スタート。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

東宝映画「若大将」シリーズは、高度経済成長と共に始まり、そして終わった傑作喜劇映画シリーズである。

しかしこれらは、娯楽映画であると同時に、優れた「政治映画」でもある。

 

2014.10.04 [土] 夜6時54分【大学の若大将】 

http://www.bs-j.co.jp/cinema/d141004.html

 

大学の若大将 [DVD]

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 第1作「大学の若大将」は1961年。今から半世紀前。敗戦から16年。

まだ新幹線も走ってない。まだまだ琉球は日本統治下にない(笑)。

 

主人公の若大将・加山雄三は東京の有名私大・京南大学の学生。
水泳部に所属、スポーツ万能にしてギターの名手。頼まれればイヤといえない明るい性格で、仲間からは頼りにされ、女性にはモテモテ。
実家は東京麻布六本木で老舗のすき焼き屋を営んでいる。

当時の4年制大学進学率は、男性で約15%、女性はなんと約3%。つまりは若大将はエリートなのだ。

六本木は今ほどではないけれど当時でも一等地。そこで老舗料理屋ということは、立派に中産階級である。

 

若大将は水泳部だから大学生たちの水着姿が何回も登場するが、印象的なのはみんなガリガリに痩せていることだ。
同じ引き締まった肉体でも、たっぷりタンパク質と脂肪を摂取した上でダイエットで絞った平成日本人のそれとは明らかに異なる。
子供時代に牛肉や豚肉をほとんど食わなかったせいで一度も太れなかった肉体なのだ。これが戦中・終戦直後に生きた日本人の肉体である。

 

登場する女性たちは、当時のさまざまな階級・階層の代表である。

主人公の妹・中真千子は、親に黙って2万円(今なら20万円以上か)もする和服を何着も持ち、茶道の稽古事に通う、東京の中産階級の娘だ。

主人公の同級生・団令子は、当時の女性の上位3%に入る教育エリート。私立ということは実家もそこそこの金持ちである。

別荘のお嬢さん・藤山陽子は社長の娘。仕事なんかしたこともない、まさしくブルジョア階級である。

クラブ歌手・北あけみは、鍛えた歌声と(当時としては)グラマラスな姿態を武器に、オンナ一匹で夜の世界を生き抜く。

そしてヒロインの星由里子は、製菓会社のアンテナショップの売り子。おそらくは高卒。頭は良さそうなのに実家があまり豊かではなかったせいで大学に進学できず、また家計を助けるために就職したのだろう。庶民階級出身である。

 

若大将シリーズのメインストーリーは、老舗すき焼き屋のボンボンで私立大生・加山雄三と、高卒の職業婦人星由里子との恋の駆け引きである。

若大将は大学の水泳部、拳闘部、スキー部で活躍し、一日5回もメシを食う大喰らいで、アルバイトでバンドを組んでギターを弾く。

ヒロイン星由里子は売り子、お針子、化粧品店と常に働いている。中には当時の日本人の憧れの象徴だったパンナム航空のスチュワーデスにも扮したりするが、基本はそれほど給料は高くない仕事だ。

 

劇中のヒロインは、女子大生、ブルジョアお嬢さん、クラブ歌手と、さまざまな女性にモテモテな若大将に対し、何度も激しく嫉妬する。

それも当たり前だ。なぜなら庶民階級の彼女は、中産階級の若大将に対して、アドバンテージは何も無いからだ。

女子大生のように若大将に勉強を教え、後に4年生大学卒業という資格を獲得するわけでもない。

ブルジョアお嬢さんのように豪華な別荘も高価なドレスも持っていない。

クラブ歌手のような色仕掛けも出来ない。

ただただ若大将の愛情だけが2人を結ぶか細い糸なのだ。心配性になって当然である。

中産階級と庶民階級、2人は生きている階層が異なるのだ。

 

東宝映画「大学の若大将(1961)」の10年戦争(その4)~ブルジョアVS花嫁修業VS夜の蝶VS中卒勤労者。 - 在日琉球人の王政復古日記

 

もう一つは若大将と、大社長のドラ息子である青大将・田中邦衛と対決だ。

この2人は、中産階級若大将とブルジョア階級青大将の階級闘争なのだ。

 

苦労知らずに育った若大将は、最初、庶民の生活が判ってない。
頑固な親父とケンカして勘当された若大将は、知り合いの植木職人の狭い家に転がり込む。棟梁は江戸っ子のやせ我慢でいつもでもいてくださいと安請け合いをするが、女房(必殺仕事人でお馴染み菅井きん)は一日5回も大飯を食う若大将のせいでコメが足りないと嘆く。
育ちが良く善良な性格の若大将は自分が迷惑をかけてることに気付くとすぐに植木職人の家を辞し、今度は金持ち向けの保養地でおんぼろボートハウスに住み込み、バイトで自活を始める。

そこで、瀟洒な別荘で遊び、最新型カメラを持つ、ブルジョア社長・上原謙加山雄三の実の父さん)の一家を助ける。
若大将は、貧乏な庶民に依存する生活を止めて、金持ちブルジョアと関係を作るのだ。

中産階級の若大将は、庶民階級とブルジョア階級の間を行き来して活躍するのである。

 

平成の今も、昭和の昔も、日本社会は明確な格差社会だ。というか日本だけの話でもなく、古今東西、格差の無い社会なんて天国はこの地上にあった試しがない。

 

東宝映画「大学の若大将(1961)」の10年戦争(その2)~加山雄三VS渥美清&高倉健~太平洋戦争再び - 在日琉球人の王政復古日記

に続きます。