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在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

《911映画列伝》「ミスティック・リバー」~善悪の彼岸~911からイラク戦争へ~大丈夫か?岡田准一&降旗康男「追憶」

誠に申し訳ないが、記事を読んだ時点では、イヤーな予感がする(笑)。

 

岡田准一、降旗康男×木村大作“巨匠”コンビ9年ぶりタッグ作「追憶」に主演! : 映画ニュース - 映画.com

2016年3月18日

今作は、高倉さんの遺作「あなたへ」を執筆した青島武と映画監督・瀧本智行による完全オリジナルストーリーで、降旗監督と木村キャメラマンも惚れ込んでいるという。幼少期をともに過ごした少年3人が25年の時を経て、ある殺人事件を捜査する刑事、容疑者、被害者という形で再会を果たし、事件の真相、心の奥底に封印してきた忌まわしい過去と対峙していく姿を描くヒューマンドラマだ。

 

たとえば「無法者集団に襲われる村を守るために集められたすご腕の男たち」なんていうプロットは、「七人の侍」「荒野の七人」以外のナニモノでもないように、

上記記事のプロットを読んだら、普通に映画好きの人は、クリント・イーストウッドの「あの」傑作映画を思い出さざるを得ないだろう。

 

さらに、わざわざ「完全オリジナルストーリー」と強調してるのが、不安に輪をかける。

通常、原作のない映画はオリジナルストーリーが当たり前で、ことさらオリジナルストーリーです!とは強調しないものである。

 

大丈夫だろうか?

 

小栗旬、V6岡田との共演へ「大きな縁を感じます」 - 芸能社会 - SANSPO.COM(サンスポ)

 V6の岡田准一(35)が来年公開の映画「追憶」に主演することが17日、分かった。
 共演は豪華俳優陣がズラリ。容疑者役の小栗旬(33)は、岡田とは2005年のNHK「大化改新」以来、11年ぶりの共演で「いつかまた一緒に仕事しようと語っていたので、大きな縁を感じます」と胸を躍らせる。被害者役に柄本佑(29)、刑事(岡田)の妻役に長澤まさみ(28)、容疑者(小栗)の妻役に木村文乃(28)が決定。他に吉岡秀隆(45)、柄本の妻でもある安藤サクラ(30)が出演。柄本と安藤の共演シーンはないが、夫婦で作品を盛り上げる。

 

幼馴染の3人が、少年時代のある出来事でバラバラになり、過去にトラウマを抱えて大人になる。そしてまた事件がおこり、刑事、被害者、容疑者という立場で3人が出会う。

トーリーを読む限り、「あの映画」に非常によく似た設定である。

 

映画「追憶」公式サイト

 

ただし、ストーリーの流れは一緒ではない。微妙に異なる。

日本映画「追憶」では、映画のメイン、大人時代の殺人事件での、幼馴染3人組の役割は、刑事、容疑者、被害者のようだが、

 

クリント・イーストウッド監督のアメリカ映画「ミスティック・リバー」では、映画のメイン、大人時代の殺人事件での、幼馴染3人組の役割は、刑事、容疑者、「被害者の父」である。

そして映画の最後で、「被害者の父」が「次の加害者」となり、容疑者が「次の被害者」となる。

 

「追憶」の幼馴染3人組は、刑事=岡田准一、容疑者=小栗旬、被害者=柄本佑、のようだ。

 

ミスティック・リバー」の幼馴染3人組は、刑事=ケヴィン・ベーコン容疑者(次の被害者)=ティム・ロビンス、被害者の父(次の加害者・容疑者)=ショーン・ペン、だった。

 

映画のプロット、役者のキャラ、格、ネームバリューを考えると、おそらく、岡田准一ケヴィン・ベーコン小栗旬ショーン・ペン柄本佑ティム・ロビンス、の割り振りだと思われる。

となると、「追憶」は、「ミスティック・リバー」の終盤に起こる殺人事件を描く後日譚みたいな感じがする。

 

ミスティック・リバー」の凄さは、映画自体の出来の良さもさることながら、背景にある、監督クリント・イーストウッドが、アメリカ人として、あの時点で、あの映画を、どうしても作らざるを得なかった、切実な思いがにじみ出ているからだ。

 

監督クリント・イーストウッドは、4年前、ミット・ロムニーの選挙応援をしたように、共和党支持者である。ただし、ネオコン(世界はアメリカが軍事的に管理するという勢力)でも、キリスト教福音派でもなく、リバタリアン(政府は余計なことをするな)である。

ティム・ロビンス民主党支持者。しかもかなり左の反戦平和主義者である。

ショーン・ペンは、民主党支持というより、アンチ共和党だ。

 

ミスティック・リバー」は、911テロ」と「イラク戦争」を巡る政治映画なのである。

 

舞台はボストン。少女が殺される。

少女の父・ショーン・ペンは、元ヤクザで今はカタギの男だ。

 

この映画だけでなく、ボストンが舞台で、ヤクザ、犯罪者、テロリストな白人が登場したら、99%アイルランド系である。

ざっと思い出すだけでも、「ザ・タウン」「処刑人」「ディパーテッド」「デビル」「ブラックスキャンダル」、、、全部アイリッシュの映画である。

 

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この映画でも冒頭、ショーン・ペンカトリック教会のミサに参列するシーンで、彼がアイリッシュだということが明示されている。

 

ずっと警察を敬遠し、法律に頼らない生き方をしてきたショーン・ペンは、愛する家族を奪われた怒りを爆発させる。復讐を誓い、封印してきた「自前の暴力人脈」を復活させ、犯人を捜す。

そして、怪しい人物として、挙動不審の旧友・ティム・ロビンスが浮かぶ。事件の当日、明らかに誰かに暴力を振るった様子がある。しかし物的証拠は何もなく、状況証拠だけしかない。

ショーン・ペンはヤクザの部下を使って脅しをかける。そして旧友・ティム・ロビンスが殺人を犯したことを隠していることがわかる。その自白を娘の殺害と判断し、ショーン・ペンティム・ロビンスを殺害して復讐を果たす。
しかし、真犯人はティム・ロビンスではなかった・・・

 

アメリカは911テロで愛する人たちを奪われる。

怒り狂うアメリカは、国際法に従って平和裏に解決するより、戦争による復讐を選択する。

怪しいのはイスラムだ。そして挙動不審の独裁者・イラクサダム・フセインが容疑者に浮上する。

国際的に弱みを見せられないフセインは虚勢を張って、アメリカへ協力姿勢をみせず、反抗的態度をとり続ける。

フセインはアメリカの「狂気」を過小評価しすぎた。いくらなんでも明確な証拠もないのに(あるわけがない。実際にフセイン911テロに無関係だった)、アメリカが攻めてくるとは思っていなかった。しかし、アメリカがホンキだと気が付いた時には、もう遅かった。

 

ショーン・ペンアメリカは、愛する娘=国民を奪われた怒りに、正常な判断を忘れ、挙動不審で怪しさ満点ながら、実は無関係だったティム・ロビンスイラクに復讐を果たす。

 

事件を法にのっとって解決しようとした、結局は無力だったケヴィン・ベーコンは、戦争以外の解決方法を模索した、でも結局は無力だった「もう一つのアメリカ」である。

ケヴィン・ベーコンは、間違った復讐が行われたことを確信しながら、この復讐もまた状況証拠しかなく、ショーン・ペンアメリカを逮捕できるかどうか、わからない。

 

ミスティック・リバー~「川」は流れる。

時間は取り戻せない。やったことは変えられない。

殺された娘は戻らないし、間違った復讐も無かったことにはできない。

 

この映画の真の凄みは、幼馴染3人組の、それぞれの3人の妻にある。3人の妻の発する(または発しない)言葉だ。この3人の妻もまたアメリカの3つの素顔なのだ。

 

ケヴィン・ベーコンの妻は、夫と不仲で、無言電話をかけ続ける。夫が見当違いの話をする限り、無言だ。そして夫が真の言葉「俺が悪かった」を発するまで待ち続ける。

 

ティム・ロビンスの妻は、心の乱れを、不安を、全部言葉にしてしまう。正しいかどうかも確認していないことをべらべら喋る。他人に伝えてしまう。その不用意な言葉が、間違った復讐の引き金を引く。

 

ショーン・ペンの妻が圧巻である。夫が復讐の間違いに気付き、後悔し反省しようとすると、夫を励ます。

あなたは家族を守った、あなたは強い、あなたは何も間違っていない。あなたはいつでも正しい、あなたは弱みを見せてはいけない、反省してはいけない、後悔してはいけない。あなたは私たち家族を守る男なのだから。私たちは強いあなたを愛している。

 

アメリカは国民を守る。アメリカは強い。アメリカは間違わない。アメリカは正しい。アメリカは後悔しない。

これは「開き直り」とは違う。「都合の悪いことの隠蔽」でもない。

アメリカは、国家は、「善悪の彼岸」に存在する、という覚悟である。

 

善悪の彼岸」・・・それは言い換えれば「神」である。

ショーン・ペンは、元ヤクザで、人殺しで、今は町の顔役で、妻を愛し、娘を愛し、カトリック教会に通い、全身に十字架の刺青を入れている。そして妻に罪を懺悔し、全てを許される。

 

ラストシーン。

真実でないことを喋りすぎ、夫が「行方不明」となったティム・ロビンスの妻は、残された希望である息子が参加する路上パレードに必死で手を振る。

ケヴィン・ベーコンは、静かに、指鉄砲で、ショーン・ペンに狙いを定める。

しかし、妻に「懺悔」しすべて許され「善悪の彼岸」に達したショーン・ペンは、ケヴィン・ベーコンの「告発」を、おどけて、堂々と受け止める。

 

悪いことをすれば、間違えれば、罪を犯せば、罰せられる「われわれ」と

何をやっても、反省してはいけない、後悔してはいけない「アメリカ」

の間には、善も悪も、罪も罰も、決して渡れぬ、深くて暗い「川」が流れる。

クリント・イーストウッドが作る映画はだいたいそうだが、恐るべき傑作である。

 

岡田准一降旗康男木村大作「追憶」。

「完全オリジナルストーリー」といくら弁解しようが、このストーリーでは、「ミスティック・リバー」を連想するな、比べるな、というほうがムリである。

もちろん、「ミスティック・リバー」のように、今の日本が作らなければならない、切実な映画、とまでは要求しないけれど、ちゃんとエンタメしてくれることを願ってる。

 

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