恥ずかしながら、私は経済と音楽がからっきしダメである。
なので、キャロルを評論することは出来ないが、あんまり観てないんだが、映画俳優ジョニー大倉の思い出を。
ジョニー大倉さん、最期までファンキー - 音楽ニュース : nikkansports.com
2014年11月28日
ロックバンド、キャロルの元メンバーで、肺がんで闘病中だった歌手ジョニー大倉さん(本名・大倉洋一)が、19日午後5時56分に肺炎で東京・広尾の日本赤十字社医療センターで亡くなっていたことが27日、分かった。62歳だった。
(略)
もう隠すことでもないだろうが、大倉は在日朝鮮人であった。
人気商売、芸能人なら血筋を隠すのが普通だった時代に、大倉はカミングアウトして、特に映画では朝鮮人役をすすんで演じていたいたような印象がある。
★緑豆社「異邦人の河」(1975年)
【初DVD化!】『異邦人の河』キャロル解散直後のジョニー大倉が光る幻の傑作・予告編
★ATG「遠雷」(1981年)
もう細かい筋は覚えてないが、いかにもATG(笑)な映画だった記憶が。
舞台は、新興ベットタウンと田舎の農家が混在する地方都市のトマト畑。
1981年にはすでに、2014年の安倍内閣が取り組む(らしい)地方創生をしなきゃいけない問題が顕在化していたし、かれこれ30年以上、何も出来ずに放置してきたんだから、今さら石破さんがどう頑張ろうと、ほぼ確実に無駄に終わって失敗するだろうことがよくわかる映画である。
あと憶えているのは、主人公とお見合いしたその日にラブホテルに行く婚約者役・石田えりの【ダイナマイトオッパイ】(馬鹿)。
大倉は主人公の友人で、人妻と駆け落ちして最後は殺してしまう役だったと思う。この映画では日本人のはず。
★松竹富士「戦場のメリークリスマス」(1983年)
大倉出演作品の中では一番メジャーだろう。
監督・大島渚、主演・デヴィット・ボウイ、出演・坂本龍一、ビートたけし、と、さすが80年代、日本が歴史上一番元気だった時代。
この映画の後代への影響は大きなものがある。
後に坂本龍一が映画「ラストエンペラー」に関わったのはこの映画がきっかけだろうし、ビートたけしはその後、正に日本有数の映画監督になった。
大倉は序盤の序盤で、オランダ人捕虜の少年と性交して、切腹させられる朝鮮人軍属役。
★角川・東宝「キャバレー」(1986年)
キャバレー 1986年 角川映画 レフト・アローン マリーン
この映画はねえ、恥ずかしいんだよ(顔真っ赤)。
客観的に観て優れた映画ではないが、それはそれでいい。しかし所々恥ずかしいんだ(笑)。東洋人のクセに「ジャズ」を語ったり(汗)、キザなセリフを気取って上滑りしてたり、極め付けは主役の野村が凄まじいまでの【超大根】(笑)。でも、この映画がやりたかったコトは、とってもよく判るんだ(笑)。
「ストリート・オブ・ファイヤー」と並ぶ、恥ずかしいけど、嫌いになれない映画の双璧かもしれない。
大倉はキャバレーのジャズ屋の一人。
・・・・・・・
1979年。日本で2本の映画が公開された。
この2本には共通点があった。
1つは、どちらも70年代東映最期のビッグスタア・菅原文太が出演していること。
もう1つは、どちらも「アナキストが主人公」だったことだ。
しかし、出来映えには天地の差があった。
一つは、今でもカルト的人気を誇る大傑作・東宝「太陽を盗んだ男」。
《アナキズム映画列伝》東宝「太陽を盗んだ男」(1979年)~沢田研二VS菅原文太~「共産主義の赤」VS「無政府主義の黒」 - 在日琉球人の王政復古日記
そして、
東映ヤクザ路線の成れの果て(笑)に咲いたアナキズムの仇花「総長の首」(1979年)。
東宝「太陽を盗んだ男」は映画が好きな人なら誰にでもオススメだが、東映「総長の首」は誰にでもお勧めはできない(笑)。
「総長の首」は、一応「仁義なき戦い」に始まる70年代東映ヤクザ実録路線の系譜に乗る作品ではあるが、「ヤクザもの」「空手アクション」「ピンキーバイオレンス」といった東映のジャンル映画をごった煮にして、そこにATG臭い青春群像劇やら、日活無国籍アクションっぽいテイストを突っ込んで、もうなにがなにやらワケが判らない(笑)馬鹿映画になってしまった。
予備知識として、仁侠映画数本と実録映画数本、東映ヤクザ映画を経験しておかないと面白さ(とダメダメさ)がわからないと思う。
それでも部分部分はカルト的な名場面がある。
舞台は戦前の浅草界隈。文太は「ギロチン社」風のアナキスト愚連隊のはみ出し者。
自分も半分ヤクザな兄・小池朝雄@刑事コロンボが、弟・文太に「ボルだかアナだか知らねえが~」と説教すると、文太が「ボルじゃねえ。アナだ。オレの心の中には黒旗が翻っているんだ」と叫ぶ。
「ボル=ボルシェビキ=共産主義者=赤旗」と「アナ=アナキスト=無政府主義者=黒旗」という左翼党派の違いも判らない平成では、全く意味不明な会話がポンポン出てくる。
西村晃@水戸黄門は老いたパントマイム芸人。戦争へと向かう昭和初期の暗い世相に嫌気をさして、「芸術も理解しない、こんなクソみたいな国はイヤだ!イヤだ!」と号泣し、口を血まみれにしながら割れたガラスをバリバリ食う。
特撮ファンにおなじみ岸田森@怪奇大作戦が【全裸(股間ぼかし入り!)】で大暴れして、コロンボ小池を風呂場で刺し殺す。
「日本エレキテル連合」みたいに顔面を白塗りにした浴衣姿の集団が、真夜中の浅草で輪になって東京音頭で踊り狂う中、とち狂った文太が(正真正銘・本当にヤクザ出身の俳優)安藤昇を間違って殺す。
ジョニー大倉は、コロンボ&文太兄弟の舎弟分の朝鮮人チンピラ役。
熱愛していたレビューの踊り子・森下愛子を、痴情のもつれと民族差別の末に絞め殺し、故郷へ逃亡する下関港で警官隊相手に千葉真一かブルース・リー並みのカンフーアクションを見せる。
・・・とまあ、断片的に説明すると、何の映画かサッパリわからないが(笑)、実際、通しで見ても支離滅裂な、確かにアナーキーな映画である。
時代劇の中村錦之助(萬屋錦之介)からバトンを渡された、鶴田浩二と高倉健の「人生劇場」から始まった仁侠映画、そして菅原文太の「仁義なき戦い」で爆発した実録路線が、とうとう終焉を迎えた墓標的映画かもしれない。
最後に、ジョニー大蔵さんのご冥福をお祈りいたします。
《アナキズム映画列伝》 「ファイト・クラブ」(1999年)《ファシズム映画列伝》~ブラッド・ピット、キングコング西野亮廣、リバタリアン西原理恵子。 - 在日琉球人の王政復古日記