子守唄は子殺し歌(1番)~ジブリ「となりのトトロ」~姉さつきは妹メイに「大根きざむよに」殺意を抱いたか? - 在日琉球人の王政復古日記
の続き。
こんな記事を見かけた。
子どもを叱るときに「鬼がくるよ!」「お化けが出るよ!」と脅すのはアリ? (ベネッセ 教育情報サイト) - Yahoo!ニュース
2017/7/16(日)
子どもが幼い時期は、「鬼がくるよ!」「お化けが出るよ!」といった叱り文句は効果てき面です。しかし、子どもがあまりに怖がるために、「悪影響もあるのでは?」と心配になる保護者のかたもいらっしゃるかもしれません。賛否両論の意見を参照しながら、鬼やお化けを用いたしつけが子どもに及ぼす影響を考えてみました。
まず、あんまり関係ない話だが(イヤ関係は大いにあるか)、この記事1本で判断するのは良くないとは思うが、何なんだ?この記事は?
子供を脅すな!というアドバイスか? 脅しもアリというアドバイスか?
ベネッセ教育情報サイトは、結局、何が言いたいのか?
「ありそうです」「のではないでしょうか」「かもしれません」「と言えるかもしれません」
最後まで読んでもどっちつかずの両論併記で、ベネッセから母親へのアドバイスがどっちなのか?全く判らない。
おそらくは、断言したら、「ベネッセとして、会社として、その結論に責任は取れるのか?」という批判が来るからなんだろうが、
こんなどっちつかずのコンニャク問答が、育児で悩む母親の助けになっているのだろうか? これを読んだ母親は、ますます、子供の叱り方に困惑するだけではないのか?
まあ、営利企業に文句を言うのもヤボだから、それはそれとして、歴史から見れば、回答は明らかである。
古今東西、地域や風土を超えて、母親たちは、明らかに、我が子を「鬼が来るぞ!」と脅して躾けてきたのである。
「ブラジルの子守唄」
静かにお休み、幼な子よ
そうしないと、クーカ(妖怪)がおまえをさらいに来るよ
パパは野に行き、ママはお仕事なのだから
黒い顔をした雄牛よ
しかめっ面を怖がるこの子をしっかりつかんで
お化けよ
屋根から降りて
この子を穏やかに眠らせておくれ
「スペインの子守唄」
お休み、幼な子よ
早くお眠り
寝ないとココ(バケモノ)がやってきて、おまえをさらってしまうよ
お休み、幼な子よ
早くお眠り
寝ないとココがやってきて、おまえを食べてしまうよ
「ハイチの子守唄」
夜だ、夜だよ、小さなママ
夜だ、夜だよ、小さなママ
眠らないと、カニがおまえを食べてしまうよ
眠らないと、カニがおまえを食べてしまうよ
おまえのママは、買い物に行ってしまってここにはいない
おまえのパパは、川に行ってしまってここにはいない
眠らないと、カニがおまえを食べてしまうよ
眠らないと、カニがおまえを食べてしまうよ
日本のシロウトお母さんも、ビギナーママも、少し安心してもらいたい。
日本だけでなく、世界中の母親は、大昔から、とにかく何でもいいから、赤ん坊はさっさと寝ろ!、赤ん坊は大声で泣くな!、と爆発寸前で育ててきたのである。
貴女だけの労苦ではない。大昔から世界中の母親が同じ思いだったのだ。
ヨーロッパの母親も、南米の母親も、「鬼が来るぞ!」と子供を脅して育てた。世界中がそれで何とかやって来たのだから、ベネッセ(笑)に代わって、ボンクラ野郎がアドバイスする。
お母さんは子供は脅していいのだ。それが人間の歴史である。
この辺の唄は、これでもまだマシだ。どんどん暗くなる。
「トルコの子守唄」
上空の黒いワシたちが向きを変え
いきなり飛びかかってきて
小さな我が子がさらわれた
眠っておくれ、幼な子よ、どうか眠って上空の黒いワシたちが舞い上がり、
真珠の王冠が後に残された
おまえの愚かな父親はいびきをかいている
眠っておくれ、幼な子よ、どうか眠って上空の黒いワシたちが飛び交い
幼い我が子につかみかかった
世界中が見ている
眠っておくれ、幼な子よ、どうか眠って上空の黒い鳥たちが高く舞い上がり
我が子の肉が引き裂かれる
世界中が加担している
眠っておくれ、幼な子よ、どうか眠って
このトルコの子守唄は暗い。
「うるさい!オレは明日も仕事なんだから、赤ん坊を静かにさせろ!それがお前の仕事だろ!」と妻を叱咤する不機嫌なダンナの姿が見える。
妻の顔には、「誰か」に殴られたアザまで想像できる。
さらに暗くなる。
「ロシアの子守唄」
眠れ、眠れ、眠れ
ベッドの端に寝てはいけない
さもないと小さな灰色オオカミがやってきて
おまえの脇腹をくわえて
森の中に連れて行き
柳の根元に埋めてしまう
「イタリアの子守唄」
ねんねんころり、ねんねしな
この子を誰に渡したらいい?
鬼婆に渡したら
彼女は一週間は生かしておくだろう
お化けに渡したら
彼は丸一年は生かしておくだろう
白いオオカミに渡したら
長い間生かしておくだろう
子守唄は妖精たちを眠らせ
我が子も眠らせてくれる
泣き止まない赤ん坊への憎悪と暴力願望は、とうとう誘拐、拉致、殺人、死体遺棄の妄想にまで発展する。
唄では、どこからかオオカミや鬼婆や妖精がやってきて赤ん坊を誘拐していくみたいに歌っているが、
言うまでもなく、オオカミや鬼婆や妖精の正体は、歌っている当の母親である。
母親が心労ストレスのあまり幽体離脱し、オオカミや鬼婆や妖精と化して、うるさい赤ん坊を殺して、死体を地中に埋めるのだ。
ベネッセに出てくる「鬼がくるよ!」「お化けが出るよ!」の鬼やお化けの正体は、当のお母さんなのである。「私を鬼にしないで」「私をお化けにさせないで」というお母さんの悲鳴なのである。
「スコットランドの子守唄」
赤ちゃんをそこに寝かせた、そこに寝かせた、そこに寝かせた
赤ちゃんをそこに寝かせて
ビルベリーを摘みに行った最愛の赤ちゃんがいなくなってしまった
小さな黄色い子ヤギを見かけた
でも我が子はいないカワウソを追って湖までいったけれど
我が子の行方はわからないどうしても赤ちゃんを見つけられなかった
スコットランドの子守唄の背後にある真実は、深くて、暗い。
寝ていたはずの赤ちゃんが消えた。どこかに消えた。探しても見つからない。
心神喪失状態から我に返った母親は、記憶が欠落して、自分の犯行を覚えていない。
いや、それもウソで、母親も本当は自分の「やらかした犯行」を覚えている。
だからこそ、「私は知らない」「私じゃない」と歌い続けるのである。
これは単なる歌の世界ではない。おそらく、現実に起こっていたことだろう。
平成の日本で、子殺しの母親がニュースになるのは、子殺しが発覚するからで、何で発覚するかといえば、現在は圧倒的な捜査能力を持つ警察が捜査するからだ。
しかし、そんな警察が誕生して、まだ、100年くらいだ。
銭形平次の時代にも、育児に悩む母親はいた。もしも彼女が「何か」をやらかしたとしても、「親分!てぇーへんだ!」と叫ぶしか能のない八五郎しか使えない平次親分は、赤ん坊の死因を科学的に検死できないし、行方不明の赤ん坊の行方はサッパリ判らないのである。結局「病死」「神隠し」で一件落着である。
「となりのトトロ」でも、妹メイが行方不明になるが、あんな騒動は、いつの時代、どこに地域にも普通にあった話だ。
映画はハッピーエンドだったが、現実は、死体で発見されたり、そのまんま見つからないことだって多かった。
さらにその「神隠し」の神の正体が、異常に神経の高ぶった若いお母さんや、くたくたに疲れ切った姉さつきだったりする、救われぬ真相も埋もれていただろう。
しかし、そういう、不思議な「病死」や「神隠し」は、当時は大して問題にならなかった。
なぜなら、当時は、赤ん坊の3割くらいが、本当の病気や、疑問の余地のない栄養失調で、バンバン死んでいたからだ。
人類の歴史は、ついこの間まで「赤ん坊は死ぬのが当たり前」だったのである。
2015年12月04日
乳幼児死亡率が改善した理由には公衆衛生の改善、生活水準の向上、化学療法、抗生物質の普及による医療技術の進展に伴う、呼吸器系、消化器系、中枢神経系の一般的な感染症疾患及び乳児固有の疾患の死亡率低下があげられる。
(略)
我が国においてほんの100年前では生まれた子供の30%が5歳までに死亡していた。それが70年前には15%、50年前には2.5%、そして今では0.27%だ。これだけ乳幼児死亡率が低い時代はせいぜいこの2世代に過ぎず、人類は初めて赤ん坊が死ぬことのない幸せな時代を経験しているのだ。
今では誰もが当然と思っていることも、多くの先人たちのたゆまない努力の結果であり、数世代前の人から見ればどれだけ望んでも得られなかった奇跡のような日常であることを忘れないようにしたい。
赤ん坊がいとも簡単にバンバン死ぬ時代は、怪しい死や疑わしい死も、追及がゆるかった。してるヒマも捜査能力もなかったのだ。
赤ん坊の大量の死体の奔流に、疑惑や犯罪は、埋もれて消えていった。
しかし、赤ん坊が簡単には死なない時代になって、捜査能力を持つ近代警察が登場して、世間は不思議な「病死」や「神隠し」を昔のように許さなくなった。
平成の母親たちは、昔の母親たちより、監視の厳しい環境なのだ。
子守唄は子殺し歌(3番)~ジブリ「となりのトトロ」~昔は「初産の子供」が「初めての子育て」ではない。 - 在日琉球人の王政復古日記
に続く。