在日琉球人の王政復古日記

NATION OF LEQUIO

西欧近代の《分厚さ》~スウェーデンがパレスチナを国家承認。イスラエル大使召還。

イメージの話だが、

右派と左派、どっちが毅然として勇気があって雄雄しいだろうか?

保守とリベラル、どっちが毅然として勇気があって雄雄しいだろうか?

排外主義と融和主義、どっちが毅然として勇気があって雄雄しいだろうか?

タカ派ハト派どっちが毅然として勇気があって雄雄しいだろうか?

 

まあ「雄雄しい」「女々しい」という表現そのものが《性差別》ではあるが、それを言い出すとに話が進まないので(笑)、とりあえずそこは不問にして話を進めるが、まあ、政治的にどっちの立場に立つかとは関係なく、前者のほうが「雄雄しい」イメージではある。後者は軟弱で「女々しい」。

 

しかしだ、こういうニュースを読むと、イロイロ考えさせられる。

  

イスラエル、スウェーデンのパレスチナ「国家」承認に反発 欧州諸国への波及を警戒 - 産経ニュース

2014.10.31
 【カイロ=大内清】欧州連合(EU)主要国のスウェーデンが30日にパレスチナを「国家」として承認し、イスラエルは同日、対応を協議するため駐スウェーデン大使を本国に召還した。パレスチナ承認の動きが欧州に広がれば、将来的な中東和平交渉で大きな圧力となりかねず、イスラエルは警戒を強めている。
 イスラエルリーベルマン外相は「中東情勢は複雑であり、責任と慎重さをもって対処すべきだ」と強く批判した。これに対し、スウェーデンバルストロム外相は、パレスチナ承認は「イスラエルパレスチナの平和的共存に寄与する」ためだと強調、「他のEU加盟国にも、(承認に向けた)明らかな兆候がある」と指摘した。
 スウェーデンは紛争当事者の仲介を外交政策の軸としていることから、パレスチナ問題への関与を深めることで、和平交渉再開などの働きかけを強めていく狙いがあるとみられる。

 

スウェーデンは北欧スカンジナビア

近年において戦火もなく、厚い社会福祉、高い生活水準、正々堂々の先進国、嫌味な言い方をすれば、世界の混乱や火種から遠く離れた、安全で悠長でお上品でおハイソな国、みたいなイメージはないではない。

 

こういうスウェーデンみたいなヨーロピアン(笑)な国が、何事も上手くいかない第三世界の人権や貧困や戦乱に関する問題について、弱者よりのリベラルで融和的な意見を言うと、「恵まれた所に住んでいるヨソ者が余計なことを言うな」「ケッ!安全な場所からキレイゴトばっかり言いやがって」みたいな感じがしないわけではない。

 

しかし、この他人事への決断で、スウェーデンという国家は、予想の範囲内とはいえ、外交上のダメージを受けている。

イスラエル、駐スウェーデン大使を召還 パレスチナ国家承認 :日本経済新聞

イスラエルのメディアは30日、スウェーデン政府がパレスチナを国家承認したことを受けて、イスラエル外務省が駐スウェーデン大使を協議のために召還したと報じた。

 

そもそも、近年のスウェーデンという国は何事も上手く行ってるわけでもない。

移民の急増で、社会は分裂し、混乱も起きている。

 

焦点:移民大国スウェーデン、暴動で露呈した「寛容政策」のひずみ | Reuters

ヒュースビーで起こった暴動は他の地区にも拡大。貧困や人種差別などを背景に2011年に英ロンドンで、2005年に仏パリで発生した暴動を思い起こさせる。今回の暴動は、スウェーデンの福祉制度に別の一面があることを示している。
同国人口の約15%は外国生まれで、北欧では最も高い割合。「反移民」を唱えるスウェーデン民主党の躍進は、同国民の意見を二極化させてきた。 

スウェーデンが2012年に受け入れた難民申請者は4万3900人。前年から50%近く増え、過去2番目に最も多い人数となった。ほぼ半数はシリア、アフガニスタンソマリアの出身者だった。 

 

見ての通り、金髪碧眼の白人サマ100%の先進国ではすでになく、白人以外の人種がたくさん住んでいる国なのである。そしてその中にはかなりの割合でイスラムが存在する。シリア、アフガニスタンソマリア、全てイスラム圏だ。

 

つまりスウェーデンイスラム移民問題で悩んでる国であって、イスラムはなにかと厄介な存在だと日々痛感している国民なのだ。

その国が、あえて、わざわざ、いやだからこそ、ヨーロッパにも無視できない影響力を持つパワフルな国家イスラエルを敵に回して、イスラムの弱小勢力パレスチナを国家として承認し、財政援助するというのだ。

 

この外交決断で、スウェーデンは具体的な利益はナニもない。

石油が安く買えるわけでもなければ、貧乏なパレスチナスウェーデン製品を大量購入するわけもなく、ユダヤ系の金融資本から好かれるはずもなく、アメリカの外交政策とも合わない、イスラエルとは確実に関係が悪化し、そして国内のイスラム系移民がトラブルを減らす効果もおそらくない。

パレスチナなんていうはるか遠くの、崩壊スレスレの、しかも宗教的にも文化的にも相容れない勢力に肩入れし、イスラエルという世界有数のウルサイ国家と仲たがいする。どう計算してもスウェーデンマイナスしかない。

たとえ、中東和平が進んだところで、遠いスカンジナビアに特段のメリットがあるわけでもない。 

 

じゃあ、一文の得にもならんことを何でわざわざやるのか?

それがスウェーデンの考える、自由、民主、平和、人道の理念からして正しいと思ってるからである。「正しい」から「やる」のだ。これ以上の理由が必要だろうか?

 

最近国益が第一」とご主張の日本の保守派からみれば、どうにもサヨクでリベラルで融和でハト派で、何よりも無益有害な甘ったるい外交である。

しかし、目先の損をあえて避けない、このスウェーデンの《愚行》には、なぜか「雄雄しさ」を感じる。

 

それは、ヨーロッパ近代200年が積み重ねてきた、いくら経済発展したとはいえアジアにはちょっとマネの出来ない「理念の分厚さ」なのだと思う。

 

この西欧近代の「分厚さ」に匹敵する、宗教や立場の違いを超えて万人が吞み込みやすい思想やシステムを、あのイスラム国や支那、そして日本が生み出せるとは、偏見もあるかも知れないが、とても思えない。

 

西欧近代というのは、世界中に多大な残虐と不正をまき散らしたのは事実ではあるが、やはり「人類の進歩」であることは、どうにも否定しきれない。