21世紀の中国、インドではない。
1952年のロンドンである。
歴史的経緯でしょうがないとはいえ「イギリス」という日本語はやや正確性に欠ける。
日本人が「イギリス」という場合、通常は「イングランド地方」を指すわけでない。普通は大英帝国「グレート・ブリテン」全体を指す。だからホントは日本語も「ブリテン」とするのがいいのだろうが、いまさらしょうがない。
しかし、この「グレート」という美称つーか、フツー自分で自分にグレートって付けるか?と皮肉も言いたくなる(笑)、手前勝手なお国自慢は、この支那の騒動と無関係ではない。
中国大気汚染、北京で初の最高「赤色警報」 - BBCニュース
2015年12月8日
中国の首都・北京市で7日夜、大気汚染に対する最高レベルの「赤色警報」が初めて発令され、8日朝から緊急対策が実施された。学校は休校となり、屋外の工事現場も停止した。警報は10日昼まで続く予定。
BBCニュースが大気汚染を報じるのは、2015年の北京が初めてではない。
そもそも、BBCの地元で、半世紀以上前に、全く同じ事態が発生している。
北京は大気汚染で、地上に陽の光も届かないらしいが、「日の下に新しきものなし」、こんなの、別に支那が世界初でもなければ、漢民族の民度がが特別低いわけでもない。
こんな程度の環境汚染は、近代文明の発祥地にして当時最強の覇権帝国、世界に冠たるグレート・ブリテンが、とうの昔に経験済みな話であって、支那のやってることは二番煎じ三番煎じの再放送にすぎない。
「Great Smog」でググって見ればすぐわかる。
日本では「ロンドン・スモッグ」と呼ばれる1952年イギリス・ロンドンの大気汚染騒動である。
この大気汚染が原因で1万人以上のロンドン市民が病死したそうだ。被害者はその何倍、何十倍かわからない。
中国共産党の北京も、女王陛下のロンドンも、大して違いはないのだ。
ただ、この和訳はよくない。正確には、地名を外して、「大スモッグ」と表現すべきである。
大気汚染だけではなく、水質汚染も全く同じ。今度は「Great Stink」で検索。
2015年の支那ではない。1858年の同じくロンドンである。
俗に「大悪臭」と呼ばれる、ロンドン・テムズ川の水質汚染騒動だ。
名探偵(上流階級の回し者)シャーロック・ホームズが、ロンドンの悪党どもを退治していた時代から、さらに1世代ほど前になる。日本は幕末・井伊大老の時代だ。
21世紀始めの漢民族も、19世紀末期のアングロサクソンも、民度はさして変わらなかったのだ。
当時のロンドンは、世界中の富という富を独占していた大英帝国の首都だ。大英帝国こそ世界の中心であり、ロンドンこそその中心である。
そのロンドンで発生する事件や騒動は、良いことだろうが、悪いことだろうが、「世界初」なのだ、と当時のブリテン人は思い込んでいた。
「世界初」ならば、「世界唯一」ならば、「ロンドンの」とか「ブリテンの」とかいう地名や固有名詞は不要なのである。
「Great Smog」や「Great Stink」と書けば、場所の名前が書いてなくとも、他のドコでもない、ブリテンやロンドンで起こったことに決まっているわけだ。この世界の「グレート」なモノはブリテンにあるに決まっているからだ。
世界中に王国は何十カ国もあるのに、地名を省略してUK=ユナイテッドキングダムと書けば、すなわりブリテンのことである、という傲慢と同じだ。
これはアメリカもそうであり、連邦制国家は他にもたくさんあるのに、US=ユナイテッドステーツと言えば、あえてアメリカと付け加える必要はない。
世界の覇権を握った国とはそういうものなのである。
世界中の富が流れ込む、当時の世界で一番リッチだった場所・19世紀のロンドンは、英国王室や貴族や大富豪やレディーやジェントルマンだけが住んでいたわけではない。
ムチャクチャな水質汚染や大気汚染の中、イーストエンドなど貧民窟には、21世紀のアジア・アフリカの最貧困地帯とほとんど変わらない、いやそれより酷い境遇で、下層階級のイングランド人や移民のアイルランド人が住んでいた。
生涯に一度も風呂に入ったことがない、ゴミは川に流し込み、路上でウンコをしたらそのまま、着ている服は親からのお下がりで、しかも洗ったことなんか一度もない、当時は寒冷期で冬にはテムズ川が凍結し、雪が積もる氷点下の石畳の路地をほとんど裸足同然で歩き、男はドロボーで、女は売春婦で、子供は乞食、食ってるものは残飯と腐った野菜クズ、死亡原因は、栄養失調と、結核と、赤痢と、アルコール中毒と、単なる風邪、平均寿命30歳前後、そういう生活である。
再度書くが、黄色人種や黒人ではない。世界で一番の先進国・ビートルズのご先祖・白人の皆さんである。たかだか150年前の話である。
日本人にありがちなパスタへの誤解~スプーンとフォークで?~いいえ。ナポリタンはどっちも使いません。 - 在日琉球人の王政復古日記
世界に冠たるロンドンでこれなら、パリもモスクワも想像が付くし、そのちょっと後の明治時代、アジアの先進国・花の都・東京だって残飯で暮らす大勢な貧民たちを抱えていた。
路上がウンコだらけだったという、お隣りの李氏朝鮮末期も同じ時代だ。世界帝国のヴィクトリア女王と、亡国の李朝、しかしその庶民の生活は大した違いはない、ドッコイドッコイだったのだ。
いくらなんでもこれではダメだ!社会構造がおかしい!という貧富格差や階級差別への怒りから、中国共産党のご先祖様が生まれ落ちた。
あのカール・マルクスがロンドンに亡命したのは1849年。客死したのが1883年。彼も1858年の「大悪臭」を嗅いでいるのである。彼の子供もロンドンの劣悪な環境で病死している。
ロンドンは、環境汚染的にも、政治思想的にも、北京の大先輩なのだ。
裸足で生まれ、残飯を食べて、結核で死んでいく、そういう地獄を無くすための戦いは、結果として、レーニン、スターリン、毛沢東、連合赤軍、北朝鮮、ポルポト、大飢饉と大粛清の地獄を生み出した。
冥界の王・ルシファーが、元はといえば、神の傍に仕えた大天使だったように、悪魔の思想だからといって鬼畜外道の悪魔が生み出したわけではない。
悪魔の思想は、だいたいの場合、この世の不正に怒る正義の天使が思いつくのである。