在日琉球人の王政復古日記

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《新左翼映画列伝》ヌーヴェルヴァーグ「勝手にしやがれ」ジャン=ポール・ベルモンド~ルパン三世~ポル・ポト

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ルパン三世」「コブラ」のモデルがお亡くなりになった。

 

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国葬級だ。

 

動画:仏俳優ベルモンドさん追悼式 マクロン大統領の姿も 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

2021年9月10日
【9月10日 AFP】戦後のフランス映画界を代表するスター俳優の一人で今月88歳で亡くなったジャン=ポール・ベルモンド(Jean-Paul Belmondo)さんの追悼式が9日、パリで営まれた。
 大勢のファンのほか、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領をはじめ政治家、俳優、スポーツ選手ら各界の著名人が参列し、別れを告げた。
 パリの廃兵院(アンバリッド、Les Invalides)で行われた追悼式でマクロン氏は「あなたを失うことは、私たちにとって自分の一部を失うことだ」と述べた。
 ベルモンドさんは、ジャンリュック・ゴダールJean-Luc Godard監督の『勝手にしやがれ(Breathless)』などに出演し、仏映画運動「ヌーベルバーグ(New Wave」を代表する俳優として知られている。
 政府主催の追悼式が営まれるのは、2019年のジャック・シラク(Jacques Chirac)元大統領以来。
 映像は9日撮影・提供。(c)AFP

 

フランスの国民的映画俳優・ジャン=ポール・ベルモンドを見ると、

陽気でお馬鹿なラテン民族としてのフランスと、オシャレで理知的な革命の祖国としてのフランス、「2つの顔」が見えてくる。

 

なんとなく、フランスといえば理知的なイメージがあるが、そもそもはイタリアやスペインや南米と同じラテン民族であり、地金は陽気な国民性だ。理知的なパリが特殊なだけ、とも言われる。

 

ベルモンドの代表作と言えば、どの新聞も「勝手にしやがれ」を上げてるが、彼のフィルモグラフィーで言えば、レアな異色作である。

彼の映画の大半は大衆娯楽アクションで、例えるなら、ベルモンドは「フランスのジャッキー・チェン」だ。というか、話はサカサマで、ジャッキー・チェンの方が「東洋のジャン=ポール・ベルモンド」である。ベルモンドがジャッキーの大先輩だ。

 

そのベルモンドのさらに大先輩が、戦前アメリカのバスター・キートンになる。

 


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ジャッキー・チェンの元祖。バスター・キートンのスタント

 

念を押すが、当時はCGもないしVFXもない。下手したら死ぬ。頭がおかしいとしか思えない(笑)。

 

フランスのバートン、ベルモンド映画はこんな感じだ。無茶苦茶である。

 


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ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」予告編

 


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ジャン=ポール・ベルモンド傑作選2』予告編

 

さすがモデルだけあって、顔もアクションもルパン三世ソックリだ。

民族性というか、イギリスがアクション映画を作ると国家のスパイが主人公の「007」になるが、フランスだと主人公が泥棒やアウトローになる。

 

21世紀のCG、VFX当たり前・以前の、マジ命懸け生身アクション映画の系譜は、「バスター・キートン(アメリカ)→ジャン=ポール・ベルモンド(フランス)→ジャッキー・チェン(香港)」という系譜となる。

 

そのベルモントにとっての異色作が、彼の代表作になったのは、世界の映画史を変えるエポックメイキングだったからだ。

 


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映画『勝手にしやがれ』予告編

 

勝手にしやがれ/À bout de souffle」(1959年)は、上記の大衆娯楽作品とは異なる、いわゆる芸術映画になる。

1950年代末から60年代前半にかけてのフランス映画「ヌーヴェルヴァーグ(ヌーベルバーグ)」は、世界中の映画に多大な影響を与え、映画史を変えた。

ヌーヴェルヴァーグは英訳すればニューウェーブである。

原題「À bout de souffle」を、英訳すれば「Breathless」、和訳すれば「息ができない」となる。

 

ヌーヴェルヴァーグの影響で、世界中の映画が変わる。

日本でも影響を受けた映画が出て来る。「青春残酷物語」(1960年)。

 


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青春残酷物語 予告篇

 

ここで驚嘆すべきは、たった1年後という短さである。

当時はもちろんインターネットなんかない。最初の衛星生中継は1963年のケネディ暗殺だ。日本はリアルタイムでフランスの情報が手に入らない。1ドル360円である。

それでも、1960年のインテリ日本人は、1959年のインテリ・フランス人の時代認識を瞬時に理解できた。つまり「同じ世界が見えていた」ということだ。

2021年のタリバンは、2021年のニューヨーカーと、「同じ世界は見えていない」ことを考えれば、恐るべきシンクロである。

 

それまで、西部劇、ミュージカル、コメディだったアメリカでも、1960年代後半から1970年代前半、「アメリカンニューシネマ」と呼ばれる新しい映画が作られる。

ざっと挙げてみれば、名作ぞろいだ。

 

俺たちに明日はない/Bonnie and Clyde」(1967年)
「卒業/The Graduate」(1967年)
真夜中のカーボーイ/Midnight Cowboy」(1969年)
イージー・ライダー/Easy Rider」(1969年)
明日に向って撃て!/Butch Cassidy and the Sundance Kid」(1969年)
スケアクロウ/Scarecrow」(1973年)
カッコーの巣の上で/One Flew Over the Cuckoo's Nest」(1975年)

 

勧善懲悪だった以前のアメリカ映画に対して、アメリカンニューシネマは、ズバリ「負け犬映画」だ。ラストで主人公が死ぬことが多い。

セリフが英語で判らなくても、見るだけで感じるものがあるだろう。

 


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Midnight Cowboy (11/11) Movie CLIP - Ratso Dies on the Bus to Miami (1969) HD

 

それでも、難解な(というか実験的な)ヌーヴェルヴァーグに比べて、さすが、アメリカンニューシネマは解かり易いエンタメになっている。

 

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このアメリカンニューシネマを終わらせたのが、

まるまるアメリカンニューシネマの手法を使ったシルベスター・スタローンの「ロッキー/Rocky」(1976年)であり、

アメリカンニューシネマ以前の復活、80年代娯楽大作の先駆け「スター・ウォーズ エピソード4/Star Wars: Episode IV」(1977年)になる。

その後、映画は巨額資本で作るようになり、CG、VFXでさらに資金がモノを言うようになり、ハリウッドが世界を制覇する。

それまではアメリカに対抗できていた、フランス映画も、日本映画も、ハリウッドに太刀打ちできなくなり、斜陽化し、21世紀の現在に続く。

 

残酷な言い方をすれば、

大昔のジャン=ポール・ベルモンドがフランスで国葬級の扱いを受けているのも、失われた昔の栄光であり、ベルモンド以後、フランス映画界に大スターがなかなか出て来なくなったことの象徴だ。

黒澤、小津、溝口、戦後経済高度成長と同時に止まってしまった日本映画と同じである。

 

アメリカンニューシネマも、ヌーヴェルヴァーグも、政治的には、ズバリ「左翼映画」である。

細かく言えば、スターリンソ連の正体に絶望し、かといって資本主義にも反逆し、「第三の道」をアナキズム実存主義第三世界民族解放闘争へと求め続けた、非・共産党系「新左翼」映画だ。

 

ヌーヴェルヴァーグは、日本60年安保闘争キューバ革命

アメリカンニューシネマは、日本70年安保闘争、フランス五史月革命、中国文化大革命ベトナム反戦運動、ピッピー・ムーブメント。

完全に同時代であり、世界史的な潮流だった。

 

欧米日の新左翼は、ソ連に失望し、その反動で、遠すぎてよく解っていないために、過剰な無責任な思い入れを持てた、第三世界の左翼運動に夢を見た。

カストロチェ・ゲバラ毛沢東が、彼らのアイドルだった。

 

中国文化大革命なんて、その実態は、毛沢東の権力闘争であり、大量虐殺・大量破壊だったが、事情を知らない当時の欧米日新左翼は過大な幻想を持った。振り返れば、完全な間違いだった。

 

ヌーヴェルヴァーグはフランス左翼思想から生まれたが、同じく、フランス左翼思想はアジアに2人の革命家を生んでいる。

ベトナムホー・チ・ミンカンボジアポル・ポトだ。

インドシナはフランスの植民地だったので、ホー・チ・ミンポル・ポトもフランスに留学している。

ホー・チ・ミンは戦前のフランス社会党フランス共産党と関わっている。

フランスで共産主義の洗礼を受けたポル・ポトカンボジアに帰国して7年後、「勝手にしやがれ」が公開される。

ホー・チ・ミンポル・ポトも、ヌーヴェルヴァーグの兄弟なのだ。

 

特に、ポル・ポトの原始共産主義による大量虐殺は、机上の空論の狂気の社会実験であり、ヌーヴェルヴァーグを産んだフランス左翼思想と、無関係ではないのである。

 

骨VS人間~孟母三遷~腐る肉こそ潔い「善」。姿形を残す骨こそみっともない「悪」。 #麻原彰晃 #東条英機 - 在日琉球人の王政復古日記

 

2021/09/16(木) 午後1時00分〜2時31分
NHK-BSプレミアム 
勝手にしやがれ

http://www.nhk.or.jp/bscinema/?mo2109161