在日琉球人の王政復古日記

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《慰安婦映画列伝》東宝「血と砂」(1965)~戦場の大和撫子・お春さん(金春芳)~「ごめんなさい」ではなく「ありがとうございました」を。


戦中派が描いた朝鮮人慰安婦の姿 その二

 

大東亜戦争中の(従軍)慰安婦が、国際問題、歴史問題、責任問題になったのは、ぶっちゃけ、平成になってからだ。

戦後も、昭和の間は、慰安婦の存在はタブーでも何でも無かった。当時は韓国人もそんなに大騒ぎしていなかった。

 

それが証拠に、昭和の戦争映画には、慰安婦がワンサカ出てくる。

日本人が、戦場の「慰安婦」という存在をどのように見ていたか?どのように認識していたか?、昔の映画を見ればよく判る。

 

そこで、慰安婦が登場する戦争映画を日本映画各社ごとに紹介してみたい。

というのも、東宝東映大映、松竹、日活、新東宝などなど、日本映画各社はそれぞれ「個性」がある。つまり背後に流れる政治思想に違いがあるのだ。各社の慰安婦映画を見比べると、その違いが判って面白い。

 

まず、東宝

文化勲章受章の仲代達矢も出てますよ。

 

 

日本の映画会社を見比べてみると、やはり一番モダンでスタイリッシュな映画を作るのが東宝である。 

その東宝においても、最もモダンでスタイリッシュな映画を作るのが岡本喜八だ。

 

岡本喜八には「独立愚連隊シリーズ」とも呼ぶべき戦争映画の一群があるが、その中にもほとんど例外なく慰安婦が出てくる。そして「朝鮮人慰安婦も平気で出てくる。タブーでもなんでもない。

 


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第1作「独立愚連隊」にも、日本人慰安婦はもちろん、そのセリフの発音から明らかに朝鮮人を連想させる慰安婦中北千枝子)もちゃんと登場する。

 

そして彼女らは「強制連行された性奴隷」ではなく、「ビジネスとしてのセックス・サービス・ワーカー」であることも描かれている

ただし、ビジネスといっても、ドライなものではなく、兵隊との運命共同体(持ちつ持たれつ)的な関係であることも描かれている。

 

そして慰安婦を管理するのは、軍隊ではなく、「ピー屋」と呼ばれる売春業者であり、かといって軍隊から完全に独立した商人でもなく、ほとんど軍属に近い存在であることも描かれている。

 

そして朝鮮人慰安婦が、端役ではなく、ヒロインとして活躍するのが、「血と砂」である。

 

まず、この映画、内容は素晴らしいのだが、題名「血と砂」が良くない。レンタル屋で手を出しにくい、なんとも雑なネーミングだ。なんだから暗い陰鬱な内容を思わせる題名だが、全然違う。全編ディキシーランド・ジャズが鳴り響くモダンな映画なのだ。この映画は題名でかなり損をしている。もっとオシャレな題名を付けるべきだった。

 

慰安婦(団令子)の名は「金山春子」。通称「お春さん」。本名「金春芳」。

隠し立てはしない。完全オープンである(笑)。

 

このお春さんのセリフで魂を震わせるものがある。

お国のために働いているオンナを、馬鹿(PAKA)にするのか?

バカ(BAKA)じゃない。パカ(PAKA)だ。朝鮮人を表現している。

 

ハッキリ言えば、慰安婦問題の本質はこの一言に尽きると思う。

 

まず、朝鮮人慰安婦を「性奴隷」と呼ぶ、日本の左翼や21世紀の韓国人は、間違っている。

彼女達は、まちがいなく金銭(あとで紙クズになる軍票だとしても)を稼いでいるのであって、その意味ではビジネスであって、奴隷ではない。

 

しかし、朝鮮人慰安婦をビジネスとして「のみ」見る、日本の保守派や右派、産経新聞やWILL系の人々も間違っている。

彼女たち、日本人慰安婦琉球慰安婦朝鮮人慰安婦は、お国=大日本帝国のために働いていたのだ。


例えば、消防士が給料を貰っているからといって「人命救助のために働いているのではなく、お金のために働いている」と言えるのか? これと同じだ。

 

左翼のように「朝鮮人慰安婦に奴隷だった。謝罪しろ」というのは間違ってる。
右翼のように「朝鮮人慰安婦は単なる金儲け商売だ」というのも間違っている。

 

もしも、あなたが日本の愛国者ならば、朝鮮人慰安婦には、「謝罪」でもなく、「中傷」でもなく、「感謝」と「報恩」こそが正しい態度だ。

日本人は、朝鮮人を含む全ての慰安婦に、「ごめんなさい」ではなく、「ありがとうございました」と言うべきなのだ。

 

慰安婦の活躍する戦争映画」と書くと、なんか暗い左翼映画を想像するかもしれないが、そんなことは全然ない。東宝三船敏郎佐藤充、そして岡本喜八、、、ではどうやっても暗くなりようがない(笑)。

 

#アンチ軍国主義映画「血と砂」

戦後日本の戦争映画というのはほとんど反戦映画だが、この映画もそう。

伊藤雄之助ふんする万年一等兵が、軍規違反で処刑された士官を埋葬する時に

死んだからって靖国なんか行っちゃダメだよ。他の英霊からまたイジメられるから。

と真っ向から靖国批判を展開する(笑)。

 

アンチ共産主義映画「血と砂」

反戦映画」ということは「左翼映画」か?、と脊髄反射してしまいそうだが(笑)、そこはそれ、邦画界の保守本流東宝」。
少年兵たちが戦う相手は八路軍(=中国共産党)。たしかに八路軍を「悪役」にはには描いていない。しかし、これまた伊藤雄之助が、八路軍の少年捕虜に

アンタのところの旗は赤旗らしいけど、ウチの赤旗慰安婦の腰巻きを陣地に掲げている)の方が良いだろ?

と、堕落したブルジョワ的・女性差別的・暴言(笑)を吐いたりする。
思想的には反戦・反軍国主義・反靖国といっても、左翼にあらず、リベラルというよりオールドリベラル=モダンなんですな。

 

#アンチ・エスニシティ映画「血と砂」

朝鮮人慰安婦の部屋の看板が「新なでしこ」だったりするのは、皮肉なのか? 鈍感なのか(笑)?

 

ミュージカル映画「血と砂」

オープニングからエンディングまで、支那の戦場に少年兵軍楽隊が奏でる「聖者の行進」が鳴り響く。 何と「ミュージカル冒険活劇映画」なんですな。
時代はドンと下って、同じ東宝映画「スウィングガールズ」というジャズ&青春映画があったが、こっちは「スウィングボーイズ」というわけだ。 

そして、アメリカのニューオリンズの黒人たちにとって、明るい曲調の「聖者の行進」は葬送の行進曲なのである。葬式の歌なのだ。この曲が戦場で流れるのは、そういう意味なのだ。

 

#アンチ・フェミニズム映画「血と砂」

平成の「スウィングガールズ」は女子高生のエロス的要素を(故意に)排除した作品だったが、昭和の「スウィングボーイズ」は少年兵のエロス的要素が濃厚な作品。

反戦・リベラルといっても、フェミニズムとは限らない。 

この映画、売春行為に対する反省や罪悪感はカケラもない(笑)。 

それどころか主役の三船敏郎は、女を知らずに死んでいく少年兵たちがカワイソウだからと、自分の恋人のはずの慰安婦・お春さんに、10人以上!の少年たちの「筆おろし」を依頼する。冷静に考えれば、無茶苦茶な女性蔑視だ。
しかし、三船も少年兵も、別に、朝鮮人を、慰安婦を、蔑視したりしているわけではない。それどころか兵隊は慰安婦を天女のように崇めている。
つまり、この映画は、10人以上の少年兵のセックスの相手をたった1人の慰安婦に頼むことが「ちょっと泣かせる人情話」として成立する世界なのだ。
男性中心主義というより、もう《男根》主義(笑)とでも呼んだほうがいいかもしれないが、これが「昭和」なのである。

 

 お次は東映あたりを。

 

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